奈義町現代美術館では2012年12月9日(日)までの会期で「林三從展〜みよりが遺したもの〜」が開催されています。 林三從(はやし・みより)さんは備前市を中心に1950年代後半から2000年にかけて先鋭的な芸術活動を展開した女流前衛芸術家で、2000年12月28日に亡くなられました。今回は遺作を中心に、その業績を幅広く紹介するものとして企画されています。 展覧会を企画された奈義町現代美術館の岸本副館長にお話を伺いました。 今回の展覧会開催のきっかけはどのようなものだったんですか? 1994年に奈義町現代美術館が開館して以来、ここに常設展示されているいずれの作家ともつながりがある人でもあり、岡山県の現代美術を考えたときには絶対はずせない作家でもあるので、展覧会を開催したいという思いはずっと持っていました。 でも、ご本人に何度か館においでいただいたこともあったのですが、タイミングがあわないというか、どういうわけか実現できずにいたんです。 去年たまたま林三從ミュージアムの代表である林幸子さんとお話をする機会があり、そこからいよいよ実現することになりました。 また今年は三從さんの十三回忌にあたります。何かの縁であったようにも感じています。 林三從さんの業績をまとまった形で見ることのできる展覧会はあまりなかったということですが。 女性の前衛作家というカテゴリーの展覧会で紹介されることはありましたが、奈義町現代美術館ギャラリーのようないわゆるホワイトキューブで、まとまった形で紹介するのは、おそらく初めてではないかと思います。 今回の展覧会は、単に作品を紹介するだけではなく、三從さんと交流のあった芸術家の作品やメッセージなど、それから三從さんの膨大なメモからピックアップした言葉なども添えて、林三從という芸術家の記憶を、幅広い側面からご覧いただけるような内容として企画しました。 そのために林幸子さんからは全面的な協力をいただきましたし、三從さんと縁のあった多くの方々の協力を得て、これだけの内容で実現することができました。 作品だけでなく言葉が書かれたボードもありますね。どれも非常に興味深い言葉です。 色々な紙に書かれた膨大なメモが遺されています。メモだけでも展覧会ができそうなほどですが、とても整理しきれないですし、今回は形あるものを重視して、美術作品を主体とする展示にしました。 ただ、林三從という作家を語る上で、言葉は非常に重要なものですので、一部をワープロでおこして掲示しています。 奥の部屋は備前アートフェスティバルのポスターと映像などですね。 備前アートフェスティバルというイベントは、備前という地方の特定の場所にこだわった土着的なイベントであり、現在全国各地で取り組まれているさまざまな地域のアートイベントのさきがけとなった、非常に重要なイベントだと思います。 また、このイベントに非常に多くの人が関わっている。そこに林三從という人の重要な側面を見ることができそうに思います。 とても幅広いジャンルにわたる活動をされていた方なんですね 正直言って、ジャンルが広すぎて絞りきれない面がありますね。 岡山の作家としては珍しいマルチ・アーティストというべき存在ですし、一方で備前アートフェスティバルなどの先駆的なイベントを企画したプロデューサーとしての面も重要です。何より、彼女を通じてたくさんの人が動いていて、ポスターや映像からその様子がよくわかります。 そこで今回の展覧会では、時代や表現といった特定の側面を切り取って提示するのではなく、ほとんど初めての回顧展でもあるので、まずは全体像をご覧いただく機会にしようと思いました。展示全体として、彼女の様々な側面を物語る代表的な資料や作品を紹介できていると思います。この会場の中には、林三從という芸術家のさまざまな側面を見出すことができるはずですし、そのいずれの切り口からでも、さらに深めていくことができる作家だと思います。 かなり多様な解釈をもたらしそうでもありますね。 人によって、さまざまな林三從像ができるだろうと思います。ただ、ここに展示できたのはほんの一部に過ぎません。この展覧会をきっかけに、林三從に興味や関心をもって、彼女の作品や言葉を通じて林三從を理解し、現代にその業績を活かしていくような動き、例えば別の切り口の展覧会や研究、アートイベントの新たな可能性を模索するような動きなど、様々な動きが生まれてくる機会になってくれればいいと考えています。 本日は大変ありがとうございました。 林三從展〜みよりが遺したもの〜 2012年11月16日(土)〜 12月9日(日) 奈義町現代美術館(岡山県勝田郡奈義町豊沢441) 問合せ 奈義町現代美術館 ☎ 0868-36-5811 |